ミドリムシ燃料がジェット機を飛ばす!?
ミドリムシが光合成をするってご存知でしたか?
ミドリムシは、動物と植物の両方の性質を持っていることから、光合成できるのは当たり前、って思われる方もいるかもしれません。ただ、実はそこまで単純な話ではないんです。そこには、ミドリムシの5億年の進化の秘密が隠されています。
光合成ができるということは、単に二酸化炭素を減らせるというだけではありません。大きな可能性を秘めたミドリムシならではの、将来の地球を救うかもしれないさまざまな利用法が、いま研究されているんです。
確認できていることの一つに、ミドリムシの二酸化炭素吸収量は、敷地面積あたりで比べるとアマゾンの熱帯雨林の3倍ほど、といわれています。想像しづらいですが、アマゾンの3倍といわれると地球温暖化に何か役に立ちそうな感じがしますよね?
今回の記事では、ミドリムシの光合成の特徴と活用法について、さらに詳しく解説します。
この記事を監修した専門家
管理栄養士 阿部友美
【経歴】十文字学園女子大学卒業後、管理栄養士を取得。同大学で研究助手をしたのち、食品メーカーにて健康に関する情報発信や、共同研究先大学に出向し研究に従事。糖化反応によるメラニン産生作用を発見、特許出願。化粧品の開発にも携わる。
目次
・ミドリムシと光合成
・ミドリムシの光合成を使った未来を変える活用法
・まとめ
1.ミドリムシと光合成
ミドリムシは光合成をして、エネルギーを生成します。
ここでは、知られざるミドリムシの進化の秘密や光合成などについて説明します。
光合成って?
光合成とは、植物などが水と光と二酸化炭素を取り込んで、エネルギーと酸素を作り出すことです。
地球の温暖化防止や都市部での空気環境をよくするために、「緑化運動」といって植物が植えられたりしますが、それらは植物が光合成をするときに酸素を大気中に排出するからなんですね。
いま、大気中にある酸素は、地球上の植物が何億年もかけて作り出したものです。
植物も動物たちと同じように生きていくためにはエネルギーが必要です。動物の場合は、主に食事をとることによってエネルギーを体内に取り入れますが、植物の場合は光合成でエネルギーを作りだしています。
光合成するために必要な「葉緑体」
植物が光合成をすると説明しましたが、全ての植物が光合成できるわけではありません。
光合成をするには、葉緑体という細胞小器官が必要だからです。
植物のなかには葉緑体を持たず、光合成ができない植物もいます。こうした葉緑体を持たない植物は、他の植物や菌類に寄生するなどしてエネルギーを確保しています。
ミドリムシは、わずか0.05mmほどの小さな体の中に葉緑体を持っており、基本的には光合成によってエネルギーを作っている生き物です。(ただし、長い時間光が当たらなかったときに、外部からエネルギーを摂取することもあるようです。)
ミドリムシは最初から緑ではなかった?
5億年前から存在していたといわれるミドリムシですが、その進化の過程は実はまだわかっていないことがたくさんあります。現在、有力な考え方は、ミドリムシは最初から光合成できたわけではない、という説です。
ミドリムシはいくつもの生物が融合していまの姿になったと考えられていますが、葉緑体を持った生物を体内に取り込んで体の一部にした、という説が有力です。
もし、ミドリムシが葉緑体を取り込んでいなかったら、現在のようにビタミンやミネラルなどの豊富な栄養を持っていなかったでしょうし、光合成によるエネルギー生成ができなくて絶滅してしまっていたかもしれません。
ミドリムシは暗いところが嫌い!?
光合成をたくさん行うには、環境も大事です。
光合成をするためには、光と水と二酸化炭素が必要で、水中のミドリムシの場合、水と二酸化炭素は常にありますので、条件が左右される可能性があるのは光。
この光に対してミドリムシは自分で動くことができるので、周囲が暗くなってしまうとビックリして明るい方を求めて動くということが分かっています(走光性)。多くの植物は自分で動くことができないので、物陰に隠れてしまったり、天候が悪い時には光合成ができなかったりしますが、ミドリムシは光のあるほうに動くので、効率よく光合成できるんです。
これも、ミドリムシならではの能力の一つですね。
2.ミドリムシの光合成を使った未来を変える活用法
エネルギー効率がとても良いといわれているミドリムシですが、その活用方法はさらに魅力に満ちています。
二酸化炭素吸収量が多いということから、地球温暖化対策の切り札として研究が進められており、
さらにはバイオ燃料として地球のエネルギー問題を解決する可能性にも注目されているんです。
地球温暖化対策の切り札
ミドリムシは地球温暖化対策に非常に注目されています。
ミドリムシの温暖化対策には次のようなポイントがあります。
二酸化炭素の吸収量が多い
ミドリムシは、他の植物に比べて二酸化炭素の吸収量が多いことが分かっています。ミドリムシの二酸化炭素吸収量は、スギやヒノキの20~30倍ほど、敷地面積あたりのアマゾンの熱帯雨林の3倍ほど、といわれています。
高濃度の二酸化炭素の中でも増殖できる
ミドリムシは高濃度の二酸化炭素の中や、放射能の中でも成長できることが確認されています。ユーグレナ社の研究では、大気中の1000倍の二酸化炭素濃度の排ガスの中でもミドリムシが光合成によって成長し、増殖することが確認されました。また、人が1分生きられないほどの高濃度の放射能の中でもミドリムシは成長し、大量に増殖していたということが報告されています。
ミドリムシ燃料でジェット機を飛ばす!
ミドリムシの食品やサプリメントに次ぐ新しい利用方法として、ミドリムシ燃料(バイオ燃料)が注目されています。いま計画されているのは、世界全体のジェット機の燃料をミドリムシ燃料に置き換えていく、ということです。(ユーグレナ社、JX日鉱日石エネルギー株式会社、日立製作所株式会社の3社共同開発)
少しややこしい話になりますが、ミドリムシは、光合成によってつくったパラミロンという物質を分解して、油脂をつくりだすことができるんです。
3.まとめ
ミドリムシの光合成について紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?
ミドリムシの光合成からジェット機を飛ばすための油が摂れるなんて驚きですよね。
また、二酸化炭素の吸収量がとても多く、過酷な環境でも二酸化炭素を吸収できることから、温暖化対策としての活用法も注目されています。
まだまだ課題もありますが、ミドリムシが未来の地球をより暮らしやすい世界にしてくれる日も近いのかもしれませんね。